3Dプリンター用フィラメントは、正しく保管できていないだけで造形品質を大きく落としてしまう消耗品。糸引きや表面荒れ、強度不足といったトラブルの多くは、設定ではなく湿気が原因になっていることも少なくありません。
3Dプリンター用フィラメントが湿気を吸ってしまった場合は、「しっかり乾燥させれば復活する」ことがほとんどです。
本記事では、フィラメントを劣化させないための基本的な保管方法から、湿気を吸ってしまった場合の現実的な対処法までを整理し、安定した造形を続けるための考え方を紹介します。

目次
湿気を取る方法① フィラメントドライヤー(最も安全・確実)
専用品・最優先
方法
スプールごと入れる
素材に合った温度で数時間乾燥
目安
| 素材 | 温度 | 時間 |
|---|---|---|
| PLA | 40〜45℃ | 4〜6時間 |
| PETG | 50〜55℃ | 4〜6時間 |
| TPU | 45〜50℃ | 6〜8時間 |
| ABS | 60〜65℃ | 4〜6時間 |
| PC | 65〜70℃ | 6〜8時間 |
メリット
失敗しにくい
変形・溶解リスクが低い
乾燥しながら印刷可能な機種もある
湿気を取る方法② オーブン(家庭用・注意必須)
やむを得ない場合のみ
方法
予熱後、**最低温度(40〜60℃)**に設定
温度計を入れて確認
扉を少し開けて通気
2〜4時間乾燥
注意
温度誤差が大きい
スプール変形・溶融事故多発
食品用と併用は非推奨
👉 PLAは特に危険
湿気を取る方法③ フードドライヤー(食品乾燥機)
コスパ重視派に人気
方法
トレイを外して高さ調整
40〜60℃で4〜8時間
メリット
温度安定
比較的安全
デメリット
改造が必要なことが多い
湿気を取る方法④ ふとん乾燥機
「条件付きで可」だが、基本的にはおすすめしない方法
使ってよいケース
PETG / ABS / PC
明確な「低温モード」がある
温度計を併用できる
手順(比較的安全なやり方)
フィラメントを耐熱袋 or 段ボール箱に入れる
乾燥機ノズルは直接当てない
吹き出し口から距離を取る
内部温度を 50〜55℃以下に制御
1〜2時間ごとに状態確認
👉 PLAには非推奨
湿気を取る方法⑤ 密閉容器+乾燥剤(応急処置)
完全復活は難しい
シリカゲル大量投入
1〜3日密閉
👉 軽度の吸湿向け/予防用
乾燥後のチェック方法
押し出し時にパチパチ音がしない
糸引きが減る
表面が滑らか
レイヤー間が強くなる
やってはいけないこと
❌ 電子レンジ
❌ ヒーター直当て
❌ 高温一気乾燥
❌ 炎天下の車内放置
AMS-Lite環境での乾燥・給送ベスト構成
※ AMS-Liteは乾燥機能を持たない点が最大の注意点です。
理想構成
「乾燥 → 乾燥状態を保ったまま給送」
ベスト構成(安定重視)
フィラメントドライヤー
印刷前に十分乾燥
可能なら「乾燥しながら給送」対応モデル
乾燥済フィラメントをAMS-Liteへセット
未使用時は即・密閉保管
👉 AMS-Liteは「供給装置」であって「保管装置」ではない
現実的な妥協構成(コスパ)
フィラメントドライヤー(1〜2本用)
乾燥後すぐAMS-Liteへ
部屋の湿度を40%以下に管理
※ PETG / TPU / PCではこの構成でも十分効果あり
NG構成
❌ 開封→AMS-Liteに入れっぱなし
❌ 室内湿度60%超で放置
❌ PLA以外を乾燥なしで多色運用
「新品なのに湿っている」理由
これは不良品ではなく仕様に近い現象です。
理由① 製造工程ですでに水分を含む
押出成形時に冷却水を使用
完全乾燥させずに巻き取り・包装されることも多い
理由② 真空パックは「乾燥」ではない
真空=空気が少ないだけ
水分ゼロではない
乾燥剤も「現状維持」が限界
理由③ 輸送・保管環境
海上輸送:高湿度
倉庫保管:温湿度管理なし
店頭在庫:数か月放置
👉 開封した瞬間は「新品」でも、中身は吸湿済みなことがある
理由④ 素材特性
PETG / TPU / PC は「空気中の水分を引き寄せる性質」
「新品=乾燥済み」と考えるのが最大の落とし穴です。
素材別・吸湿スピード比較
※ 室温25℃・湿度60%環境を想定
| 素材 | 吸湿スピード | 影響の出方 |
|---|---|---|
| PLA | 遅い | 数日〜数週間 |
| ABS | 遅い | 数週間 |
| PETG | 中 | 数日 |
| TPU | 速い | 数時間〜1日 |
| PC | 非常に速い | 数時間 |
症状が出始める目安
PLA
糸引き増加
表面荒れ
(まだ印刷は可能)
PETG
パチパチ音
表面の泡
強度低下
TPU
押出不安定
ノズル詰まり
造形失敗多発
PC
レイヤー間が割れる
表面白濁
強度激減
乾燥タイミング
開封後すぐ
印刷品質が落ちたと感じたら
長時間印刷前
保管ルール
密閉容器+乾燥剤
湿度計を入れる
目標湿度:30%以下
「迷ったら乾燥」
設定を疑う前に、
まず乾燥が最短ルート。
まとめ
専用ドライヤーが最適解
オーブンは最終手段
乾燥後は必ず密閉保管
フィラメントは消耗品+環境依存素材
AMS-Liteは便利だが「乾燥は別管理」
湿気対策は失敗率を半分以下にする最大要因
