3Dプリンターを買う前に知っておくべき、準備・確認が必要な”知識・設備・環境”

「3Dプリンターを買おう」と決めた瞬間は、少しワクワクして、同時に少し不安にもなる。
本体を選ぶだけで大仕事のように感じるが、実は“買う前”に少し準備をしておくかどうかで、その後の体験は大きく変わる。

「届いたけれど置き場所がない」
「音や振動が想像以上だった」
「フィラメントの管理ってこんなに大事なの?」
——こうした戸惑いは、珍しい話ではないと思う。

本記事は、これから3Dプリンターを購入する人に向けて、
「本体が届く前に考えておくと楽になること」
「最初から揃えておくと失敗しにくい環境」
を、実用を踏まえて現実的に整理してみた。

高価な道具を“置物”にしないためには、最初の一歩を確実にするための準備をしておくことがおすすめ。

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目次

購入・準備を検討したほうがいい設備や環境

AMS-Lite付きのBambu Lab A1を導入するにあたり、「本体以外に検討・準備しておくと失敗しにくい設備・環境」を整理しておきます。


設置環境まわり(最優先)

1. 設置台・耐振動対策

  • 条件

    • 水平が出る

    • 剛性が高い(たわまない)

  • おすすめ

    • 重量のある作業台

    • 洗濯機用防振ゴム or 防振マット

  • 理由

    • 高速印刷機は振動=造形荒れにつながる


2. 設置スペースの余裕

AMS-Liteは思った以上に場所を取る

  • 本体+AMS-Lite+メンテ動線を含め

    横幅+30〜40cm、背面+20cmは見たい

  • フィラメント交換やチューブ脱着のため上部空間も重要


3. 室温

  • 理想

    • 室温:20〜28℃

    • 湿度:40〜50%以下

  • 理由

    • 湿度が高いとフィラメント劣化が早い

    • PETG / PC / TPUで顕著

冬季など室温が低い場合、保温も兼ねてエンクロージャを使用することが望ましい。

4. 湿度管理

フィラメントは湿気を吸いやすい。購入したばかりのものでも一度乾燥させてから使った方がいいという話もあるくらい。


電源・安全対策

5. 電源タップ(品質重視)

  • 雷サージ付き

  • 個別スイッチ

  • 容量に余裕(1500Wクラス)

  • 3ピンプラグ対応(海外製プリンターに多い)

👉 安価なタップはノイズ・故障リスクあり


6. 消火・安全対策(現実的に重要)

  • 小型消火器(粉末 or 強化液)

  • 難燃マット(本体下)

  • 煙感知器(設置部屋)

※ 発火確率は低いが「ゼロではない」


フィラメント管理(AMS-Lite必須)

7. 乾燥環境(最重要)

AMS-Liteは乾燥機能なし

  • 選択肢

    • フィラメントドライヤー(1〜2スプール)

    • 乾燥剤入り密閉ケース

  • 最低限

    • シリカゲル大量

    • 湿度計

👉 PETG / TPU / PCは必須レベル


8. 予備PTFEチューブ・継手

  • 消耗・詰まり対策

  • AMS-Liteはチューブ経路が長い


消耗品・初期同時購入推奨

9. ビルドプレート関連

  • 予備プレート

    • PEI(スムース / テクスチャ)

  • 定着補助

    • スティックのり

    • 専用接着剤(PC・ABS用)


10. ノズル関連

  • 予備ノズル(同径)

  • 硬化ノズル(0.4mm)

    • CF系を考えているなら必須


11. メンテナンス工具

  • ニッパー(精密)

  • ピンセット

  • ノズルクリーナー

  • 真鍮ブラシ

  • 六角レンチセット


排気・臭い対策(素材次第)

12. 換気環境

  • PLA中心 → 必須ではない

  • ABS / ASA / PC → 強く推奨

<現実的な対策>

  • 窓+換気扇

  • 卓上空気清浄機(HEPA+活性炭)

※ AMS-Lite機は基本オープン構造なので特に重要


作業効率・快適性UP

13. 作業用照明

  • 本体ライト+手元照明

  • 造形ミス・糸引き確認が楽


14. PC / ネットワーク環境

  • 安定したWi-Fi

  • Bambu Studioが快適に動くPC


15. 造形後処理スペース

  • サポート除去

  • ヤスリ・カッター作業

  • ゴミ受け用トレイ


「あると世界が変わる」オプション

16. フィラメント乾燥+給送一体型ケース

  • ドライ状態のままAMS-Liteへ供給

  • 安定性が段違い


17. 騒音対策

  • 防振マット+厚手カーテン

  • 夜間稼働を考えるなら重要


優先度まとめ(AMS-Lite前提)

【必須レベル】

  • 安定した設置台

  • 電源タップ(高品質)

  • フィラメント乾燥対策

  • 基本工具

【用途次第で必須】

  • 換気設備(ABS / PC)

  • 硬化ノズル(CF系)

  • 予備ビルドプレート

【快適性UP】

  • 照明

  • 防振・防音

  • 後処理スペース

フィラメントの種類と性質を把握しておく

3Dプリンター(主にFDM方式)で一般的に使われるフィラメントの種類と性質を、実用目線でまとめます。


① PLA(ポリ乳酸)

最も定番・初心者向け

  • 特徴

    植物由来で扱いやすく、反りが少ない

  • 強度

    硬いが割れやすい(靭性は低め)

  • 耐熱性

    低い(約50〜60℃で変形)

  • 印刷難易度

    ★☆☆(非常に簡単・あまり臭わない)

  • 用途

    フィギュア、模型、試作品、装飾品

👉 精度重視・見た目重視ならまずPLA


② ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)

実用品向けの定番素材

  • 特徴

    強度・耐熱性が高い

  • 強度

    衝撃に強い

  • 耐熱性

    高い(約90〜100℃)

  • 印刷難易度

    ★★☆(反りやすい・臭いあり)

  • 用途

    ケース、工具部品、機構部品

👉 エンクロージャ推奨


③ PETG(ポリエチレンテレフタレート・グリコール)

PLAとABSの中間

  • 特徴

    強度と柔軟性のバランスが良い

  • 強度

    割れにくい

  • 耐熱性

    中程度(約70〜80℃)

  • 印刷難易度

    ★☆☆〜★★☆

  • 用途

    容器、屋外部品、実用品

👉 実用性重視なら最有力


④ TPU(熱可塑性ポリウレタン)

ゴムのように柔らかい

  • 特徴

    高い弾性・柔軟性

  • 強度

    引き裂きに強い

  • 耐熱性

    中程度

  • 印刷難易度

    ★★★(送りが難しい)

  • 用途

    スマホケース、ガスケット、タイヤ


⑤ ASA

ABSの改良版(屋外向け)

  • 特徴

    耐候性・耐UV性が高い

  • 強度

    ABS同等

  • 耐熱性

    高い

  • 印刷難易度

    ★★☆

  • 用途

    屋外パーツ、車載部品


⑥ PC(ポリカーボネート)

最高クラスの強度と耐熱性

  • 特徴

    非常に高い耐衝撃性・透明性(透明PCの場合)

  • 強度

    家庭用フィラメントの中で最上位クラス

  • 耐熱性

    非常に高い(110〜130℃)

  • 印刷難易度

    ★★★(非常に反りやすい)

  • 用途

    機械部品、安全部品、耐熱部品

性質比較(簡易表)

材料強度耐熱柔軟難易度変形温度
PLA××50℃~
ABS90℃~
PETG低〜中70℃~
TPU60℃~
ASA90℃~
PC110℃~

迷ったらこの選び方

  • 造形・見た目重視 → PLA

  • 実用品・安定性 → PETG

  • 耐熱+強度 → ABS / ASA

  • 屋外常設 → ASA

  • 最高強度・耐熱 → PC

  • 柔軟パーツ → TPU

3Dプリンターによって推奨フィラメントが異なるので注意。

ちなみにBambu Lab A1の推奨フィラメントはPLA、PETG、TPU、PVA(水に溶けるサポート材)まで。ABS、ASA、PC、PA(ナイロン)、PET(ペットボトルの材料)、カーボン/ガラス 繊維強化ポリマーは非推奨。

室温の問題

3Dプリンター使用時に室温が低すぎる(目安:15℃以下)と、思っている以上に多くの弊害が起こる。

「なぜ失敗するのか分からない」原因が、実は室温だったというケースも多い。

起こりうる弊害には次のようなものが挙げられる。


① 反り(Warping)が発生しやすくなる

最大かつ最頻出の問題

  • 造形物が急激に冷える

  • 下層と上層の収縮差が大きくなる

  • 結果:角が浮く、プレートから剥がれる

影響を受けやすい素材

  • ABS / ASA

  • PC

  • 大型モデル全般

👉 室温が低いほど「冷却しすぎ」になる


② 層間剥離(レイヤー割れ)

強度が出ない・途中で割れる

  • フィラメントが十分に溶着する前に冷却

  • レイヤー同士が接着しきれない

  • 見た目はOKでも簡単に割れる

特に顕著

  • ABS / ASA / PC

  • 肉厚が薄いモデル


③ ベッド密着不良(ファーストレイヤー失敗)

  • ベッド表面温度が安定しない

  • 周囲空気に熱を奪われる

  • 初層が浮く・剥がれる

👉 「レベリングは合っているのに失敗する」典型例


④ 寸法精度の悪化・歪み

  • 冷却が不均一になる

  • 片側理解 → ねじれ・歪み

  • 穴径・嵌合精度が狂う

👉 精密部品ほど影響大


⑤ ノズル詰まり・押し出し不安定

意外と見落とされがち

  • フィラメントがノズル手前で冷やされる

  • 溶融ゾーンが不安定になる

  • 押し出しムラ・クリック音発生

特に

  • 高速印刷

  • PC / 高温材料

    で顕著


⑥ 冷却ファンの「効きすぎ」

  • 冷却ファンON=過冷却

  • ブリッジ・オーバーハングが崩れる

  • 層割れが加速

👉 室温が低いとファン設定が過剰になる


⑦ プリンター本体への悪影響(長期)

  • リニアレールの潤滑不良

  • 樹脂部品の硬化

  • ベルト張力の変化

→ すぐ壊れるわけではないが精度劣化の原因


素材別・低温耐性の目安

素材低室温耐性
PLA○(比較的強い)
PETG
ABS×
ASA×
PC××

※ PLAでも大型造形は影響あり


どれくらいが「安全」?

  • 最低ライン:18℃

  • 安定域:20〜28℃

  • 理想:22〜25℃


対策(現実的)

1. エンクロージャ(最強)

  • 自作でもOK

  • 室温+10℃以上の効果

2. 部屋暖房

  • プリンター部屋だけで十分

  • 印刷中だけONでも効果あり

3. 冷却ファン調整

  • 初層ファンOFF

  • 通常より10〜30%下げる

4. ドラフト(隙間風)対策

  • 窓・ドアからの風を遮断

  • エアコン直風NG

エンクロージャは必要?

結論から言うと、「誰にでも必須」ではないが、条件次第ではほぼ必須

用途・素材・設置環境で判断すると失敗しない。

条件必要度
PLA中心・小物のみ不要〜低
PETG・実用品あった方が安定
ABS / ASA / PCほぼ必須
冬場・寒い部屋必要度高
換気が取りにくい推奨

エンクロージャが「不要」なケース

① PLA中心・室温が安定している

  • 室温20〜28℃

  • 小〜中サイズ造形

  • 見た目重視

失敗率は低い


② プリンターが低速・低温設定

  • 反りにくい条件

  • 冷却が過剰でない

→ エンクロージャなしでも問題になりにくい


エンクロージャが「必要」になる理由

① 温度安定(最大のメリット)

  • 内部温度を30〜45℃程度に維持

  • 反り・層間剥離を大幅に低減

  • 設定を詰める前に物理的に解決


② 素材の選択肢が一気に広がる

  • ABS / ASA / PCが現実的に使える

  • 強度・耐熱パーツに挑戦可能

👉 「PLA専用機」から脱却


③ 造形品質の底上げ

  • 大型モデル

  • 精密嵌合

  • 長時間プリント

→ 安定度が段違い


④ 臭い・安全対策

  • 揮発臭の拡散防止

  • 換気・フィルタ設置が容易

  • ペット・子ども対策にも有効


デメリット・注意点

  • 設置スペース増加

  • コスト

  • PLAでは過熱しすぎる場合あり(扉開放で対応)

※この記事にはプロモーションが含まれています。[PR]

[この記事を書いた人] おき兄
デジタル世界で遊び続けて十余年。ガジェット大好き。組み立てたり壊したりするのも好き。昔はマザーボードに美しさを感じたりしていました。最近はVR/MRに傾倒。Xアカウント:@Okiniでも情報共有。

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