ガウシアンスプラッティング(Gaussian Splatting)は、3Dモデリングとレンダリングの分野で注目されている技術。この手法は複数の画像からシーンを再構成し、リアルタイムでフォトリアリスティックな3Dモデルを生成することを可能にする。
近年、3Dスキャン技術は急速に進化し、私たちの生活に新たな可能性をもたらしている。その中でも、特に注目を集めているのが「Scaniverse」というアプリ。このアプリはiPhoneを使って簡単に高品質な3Dスキャンを行うことができるため、専門的な知識がなくても手軽に利用できるのが魅力。特に最新の「3Dガウシアンスプラッティング」技術を活用することで、従来の方法では難しかったリアルな3D表現が可能になった。
今回はScaniverseを使った3Dスキャンの魅力やその使い方についてまとめてみた。

目次
ガウシアンスプラッティングの基本概念
3Dガウシアン・スプラッティング(3D Gaussian Splatting/3DGS)は1990年代初頭にLee Westoverによって提案されたスプラッティング技術を基にしている。
この技術は2023年にフランス国立情報学自動制御研究所の研究グループによって再評価され、現在の姿にまで進化してきた。ガウス分布を用いて3D空間を埋めることで、滑らかで詳細な画像を生成する。
技術的な特徴
データ構造: 各3Dガウスは位置情報(x, y, z)、色(RGB)、透明度(α)、および形状を表す共分散行列から構成される。これにより複雑な形状や光の効果を自然に表現することができる。
リアルタイムレンダリング: この技術は動的なシーンをリアルタイムでレンダリングする能力を持ち、特に高解像度の画像生成が可能。ユーザーは常に新しい視点でシーンを観察することができる。
応用分野: ガウシアンスプラッティングは、3Dマッピング、フォトグラメトリ、さらには自動運転技術など、さまざまな分野での応用が期待されている。特に建設やインフラ管理において、詳細な3Dモデルを提供することによって計画や意思決定を支援する。
利点と課題
利点
高品質な視覚表現: ガウシアンスプラッティングは従来の点群データやメッシュベースの手法と比較して、より滑らかで詳細な3D表現を実現できる。
シームレスなワークフロー: PIX4Dなどのプラットフォームでは、データキャプチャから処理、視覚化までのプロセスが統合されており、ユーザーは簡単に高品質な出力を得ることができる。
課題
コスト: 高解像度のレンダリングには依然としてハイレベルのリソースが必要。特に大規模なプロジェクトでは、処理時間やコストが課題となる。
例えば個人がWindows 11マシンでガウシアンスプラッティングを行う場合、マシンスペックは高性能であればあるほど良いが、物理メモリは最低でも64GB、GPU(グラフィックボード)はロースペックのものでも「NVIDIA RTX 4070ti VRAM 12GB」程度は用意する必要がある。グラボだけで10万円以上はする。
業務向けの本格的な3Dガウシアンスプラッティングを行おうとしたら、「PortalCam」のような本格的な3Dスキャン用機材が必要になり、それだけで75万円ほどかかる。
技術の成熟度: 新しい技術であるため、さらなる改善や最適化が求められている。特にアンチエイリアス(ギザギザを目立たなくする技術)や圧縮技術の向上が必要。
ガウシアンスプラッティングをiPhoneで利用する場合
最も安価にガウシアンスプラッティングを利用する方法は、Nianticが提供しているスマホ向けのアプリ「Scaniverse」(スキャニバース)を使うこと。iPhone XS以降の製品であればガウシアンスプラッティング技術を使って周囲のオブジェクトを3Dスキャンすることができる。
Android機でも使えるのだがiOS版と比べると機能が限定されるのでiPhoneで利用するのがおすすめ。さらにiPhone12 Pro以降のProタイプの製品にはLiDAR(Light Detection And Ranging)が搭載されており、この機能を活用することでScaniverseの3Dスキャンレベルは格段に向上する。
LiDARシステムはレーザー光(近赤外線など)を1秒間に数百万回照射して被写体の形状を点群データとして取得する仕組み。iPhoneのLiDARは照射距離が5mと短いため広範囲のスキャンはできないけれど、部屋のスキャンくらいは余裕でできる。
ちなみにiPhoneのLiDARは一応Class1の安全認定されたレーザーだそうで、いろいろと心配しなくてもいいらしい。
Scaniverseの作例
Scaniverseは完全無料で利用できるため、コストを気にせずに高精度な3Dスキャンが可能。この点が多くのユーザーにとって大きな魅力となっている。
近所の公園の椅子。
iPhone 15 Pro MAX#Scaniverse#GaussianSplatting pic.twitter.com/Ug71JxWTwI— turubox (@turubox) March 30, 2024
スキャン作業自体が楽しいという意見も多く、特に部屋やオブジェクトをスキャンすることが新しい体験として評価されている。ユーザーは創造的な活動として楽しむことができる。
#JAXA #角田宇宙センター
展示室その1#Scaniverse #localguides pic.twitter.com/gaelqtmag0— One (@OneMarkGLG) April 18, 2023
スキャンのプロセスがシンプルで、特別な技術や知識がなくても利用できる点がユーザーに好評。
ホテルを3Dスキャンする時はこんな感じでやってます
左が3Dスキャンされた3Dモデルで右が3Dスキャン中の映像
アプリはscaniverseが無料で使えて性能も良いのでオススメ pic.twitter.com/K61yjBkAPY— iwamah (@iwamah1) April 7, 2023
スキャンしたデータは、他の3Dモデリングソフトウェアで使用できる形式でエクスポートできるため、プロジェクトに応じた利用が可能。
国宝建築物を有する加古川市の鶴林寺の仁王門をiPhoneでスキャンして3D化。スマホ3Dスキャンを使って地域の文化財を身近に感じてもらう取組をもっと進めていきたいな。#Scaniverse #ArrivalSpace pic.twitter.com/Z42w2tJJvb
— tomo(とも) (@view0608) October 25, 2025
Scaniverseはスキャン対象に応じて異なるモード(小型、中型、大型)を選択できるため、さまざまなシーンに対応可能。この柔軟性がユーザーにとって非常に便利。
【秋葉原の例の場所】
東京・秋葉原の万世橋にある「行きたくても行けない階段」をもっと近くてみたい!
と思ってiPhoneで3Dスキャン。
測定範囲が5mのスキャンなので限界はあるけれどまぁまぁの精度で立体視できた♪#Scaniverse pic.twitter.com/R9XZATqSNo— 情景師アラーキー (@arakichi1969) April 28, 2024
もちろん小物もいける。
やはり小型のフィギュアはscaniverseでスキャンしたのが一番クオリティが高い
やっぱりこのアプリ凄いな…#LiDAR#scaniverse#3Dスキャン pic.twitter.com/JQ8k6PPEbf— 相見(アイミ)です。ソウミじゃないよ (@aibou048) November 17, 2022
Scaniverse利用上のポイント
Scaniverseを利用する際のポイント・注意点は次の通り。
スキャンの重複を避ける: 同じ物体を二回以上スキャンしないことが推奨されている。重複したスキャンはデータの混乱を招く可能性があるため注意が必要。
スキャン時間の管理: スキャンは1〜3分程度が最適とされている。長時間スキャンを続けると、逆に品質が低下することがあるので、適切な時間を守ることが重要。
動きのスムーズさ: スキャン中は自然なペースで動くことが求められる。急に動いたり、止まったりすると、スキャン結果に影響を与える可能性がある。
良好な照明条件: 明るく均一な光の下でスキャンすることが推奨されている。暗い場所ではスキャンの精度が落ちるため、できるだけ明るい環境で行う必要がある。
対象物との距離: スキャン対象との距離は3メートル以内が理想とされている。遠すぎると詳細が捉えられないため、適切な距離を保つことが重要。
データ処理のタイミング: スキャン後、すぐにデータを処理する必要はない。後で処理することも可能だが、その際はアプリを開いたままにしておく必要がある。
GPSデータの確認: スキャンしたデータにはGPS情報が必要。GPSデータがない場合、マップに投稿できないことがある。
まとめ
Scaniverseを利用することで、誰でも簡単に3Dスキャンを楽しむことができる。
iPhoneのカメラやLiDAR機能を活用し、リアルな3Dモデルを手のひらで作成できるこのアプリは、趣味としての利用はもちろん、教育やビジネスの現場でも大いに役立つとみられている。
特に3Dガウシアンスプラッティング技術の恩恵により、スキャンしたデータは高精度でかつ迅速に処理されるため、時間をかけずに成果を得ることができる。
Scaniverseを活用して、あなたの周りの世界を3Dで記録し、新たな視点で楽しんでみてはどうだろうか。
