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唯一絶対とも言える”戦争ものコミック”を通じて、今年も平和について考える季節が来た

「戦争」という言葉がにわかに身近なものになってきたような気がする今日この頃。海外では宗教紛争が続き、国内では集団的自衛権の行使容認問題が騒がれている。毎年8月が近づくと、メディアは日本の戦争問題について取り上げ始め、戦争をテーマにした特別枠のドラマを製作・放送する。

「現代の人が戦争体験を想像することは難しい」と戦争を体験された方がTVで言っていた。終戦から70年が過ぎようとしている今、現代人の「平和ボケ」は深刻なのだろうが、これは自分たちではどうしようもないこと。せめて戦争記念館等の施設を見学したり、戦争をテーマにして書かれた書籍やコミックに触れることで疑似体験をして、自分の中にある「戦争と平和」を見直すことが必要じゃないかな。


何度も読み直す価値がある戦争ものコミック2作。こうの史代氏によって描かれたこの2作品は、戦争をテーマにした作品としては「誰にでも勧められて、誰にでも受け入れられる」という点で唯一絶対の作品だと思う。8月が近づいたからではないが、1年のうちのこの季節だけでも、戦争と平和について考えてみたい。

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「この世界の片隅に」 こうの史代

最近になって描かれた戦争コミックで、こうの史代氏の作品だけは絶対に外せない。ともすればつらく厳しい描写になりがちな戦時中の庶民の暮らしを、彼女の独特なユーモアセンスとやさしいほのぼのとした画風で実直に描いているこの作品は、素朴なイメージとは裏腹に読み手に強烈なインパクトを与えてくれる名品である。過激な表現を前面に出しているような作品よりも、こうの史代の作品は鮮明に心に残る。

主人公である浦野すずのおっとりしたキャラクターが、この作品の世界観を決定づけている重要な要素である。世にありがちな「戦争を強くたくましく生き抜く女性」という人物像ではなく、どこか抜けているところがあり、ある意味”天然キャラ”の主人公の姿を通して戦争を語っているところが、この作品の新鮮さであり、大きな魅力の1つ。

「夕凪の街 桜の国」 こうの史代

「戦争と広島」をテーマに描かれた、こうの史代氏の出世作。コミック誌に2003年に掲載された「夕凪の街」と2004年掲載の「桜の国 第一部」と、単行本描き下ろしの「桜の国 第二部」の三部構成で、1つの家族の三世帯に渡る「戦後」を描いている。「夕凪の街」は広島に原爆が投下された10年後、「桜の国 第一部」は戦後42年経った東京、「桜の国 第二部」は戦後59年経った2004年の西東京と広島が舞台。

広島の原爆が後世にどのような影響を及ぼしたのかということを、広島市出身の作者ならではの目で、誠実に丁寧に描いている。残酷な描写などは一切ないが、戦争の残酷さが読み手の心に静かに沁み込んでくるような作品。


「はだしのゲン」閲覧制限のお粗末とも言える一件や、広島の平和記念資料館から蝋人形が撤去される件に見られるように、戦争に関する残酷な表現が敬遠される現代の風潮を憂う向きもあるけれど、残酷な描写だけでは万人に受け入れられないのは事実。本作品や「火垂るの墓」などのアニメ作品の手法で、せめて「平和ボケなりに受け止められるような戦争の描写」でいいから後世に伝えられれば、その方がよっぽど効果的だと思う。


2つの作品はともに実写化されている。田中麗奈・麻生久美子出演の映画「夕凪の街 桜の国」はコミックファンからも高評価を受けた。「この世界の片隅に」は北川景子主演でテレビドラマ化されたが、こちらは残念な作品と言われている。

この記事の執筆者:おき兄(おきにい)
PCで遊び続けて数十年。ガジェット好き。マザーボードに美しさを感じる系の人。子供の頃からいろいろなものを組み立てたり壊したりしてました。最近はVR/MR的な世界に傾倒しつつあります。
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