すでに様々なサイトで紹介されている内容ですが、GooglePlayが利用可能な本来のChromeOSをLinux Mintを介して既存の古いPCにインストールする方法についてまとめます。
この方法を使うことで、ChromeOS Flexではできなかった「GooglePlay経由でAndroid用のアプリをインストール」することが可能な、なんちゃってChromebookが出来上がります。
※ChromeOS FlexはCloudReadyから進化したもので、Androidアプリを使用することができません。
目次
今回私は何をしたかったのか
私の手元には型落ちのノートPCが複数台ありますが、中でも使わないともったいないと感じていたのがLet’s NoteのCF-SZ5。メモリーが4GB固定で増設が効かず、しかもSSDの調子が悪いのか必要以上に動作が遅いという困った代物。Windows11を入れたところ、とてもとても使用可能な動作速度ではありませんでした。
HDMIでテレビにつなげばビデオオンデマンドの鑑賞程度には使えるので、これを機にChromebook化して現役復帰を目指します。
ChromeOSのインストールに必要なもの
インストールには以下のものが必要でした。
- Windows PC (RufusでUSBメモリーにイメージを焼いたりするため)
- インストール対象のPC(既存の古いPC)
- USBメモリ① (16GB程度。LinuxMint用)
- USBメモリ② (8GB程度。ChromeOS用)
- その他: UEFI必須、ネットワーク必須
CPU: 第4世代以降のIntel iシリーズ、またはIntel N100、Intel Atom (Baytrail)、Intel Core (第1~10世代以後)、AMD Stoney Ridge & Bristol Ridge、AMD Ryzenなど、対象となるリカバリーイメージに対応したCPU。
RAM: 4GB以上
ストレージ: SSDまたはeMMC 32GB以上が推奨されています。OSのインストール先はUSBメモリ (16GB以上あれば安心)、SDカード/microSDカード、外付けHDD/SSD も利用できます。特に外付けSSDは快適さが向上する可能性があります。
USBメモリ: 8GB以上 (できれば16GB以上) のUSB3.0メモリが最適ですが、別に2.0でも構いません。
USBポート: USB3.0ポートが推奨されますが、2.0でもできます。2ポート必要になります。
その他: UEFI必須、ネットワーク必須。ある程度のPC知識も必要です。
インストールの全体的な流れ
基本的な流れは以下のようになります。
- 必要なファイルをダウンロード。
- Rufusを用いてUSB①をLinux MintのライブUSBインストールメディアにする。
- USB②をNTFSでフォーマットし、ChromeOS用のファイル群をコピー。
- インストール対象PCにUSB①を挿して電源を入れ、F2キー等でBIOS画面を出す。
- BIOS/UEFI設定を変更し、優先をUSB起動にしてF10(保存して再起動)。
- USB①からLinux Mintが立ち上がる。
- Linux Mint上でターミナルを使い、インストール先のストレージデバイス名を確認。
- USB②内のinstall.shスクリプトを必要に応じて編集する。
- Linux Mintをネットワーク接続した上で、USB②を挿入。
- ターミナルからUSB②のインストールスクリプトを実行する。
- インストール完了後、Linux Mintをシャットダウン。USB①と②を抜いて電源を入れ、ChromeOSを起動。
- ChromeOSの初回設定を行う。
詳細な手順
必要なファイルのダウンロード
Linux MintのOSイメージ: Ubuntu DesktopのLTS版(例: 20.04や22.04)が無難とされていますが、私は「linuxmint-22.1-cinnamon-64bit.iso」を使いました。
ChromeOSリカバリーイメージ: インストールしたい自機の環境(CPU世代など)に合ったものをChrome100からダウンロードします。
一般的に利用されているタイプは、Intel Atom (Baytrail) 用のbanjo、Intel Core 第1~9世代用のrammus、Intel Core 第10世代以後用のVolteer、AMD Stoney Ridge & Bristol Ridge用のgrunt、AMD Ryzen用のzorkなどがあります。
CF-SZ5の場合は適当にrammusを使って結果オーライでしたが、何を使ったらいいかわからない場合は自機のCPUと同じものが使われているChromebookをAI(ChatGPTとかFeloとか)に洗い出してもらって、その型番をChrome100で検索するという手もあります。
ダウンロードしたzipファイルを解凍し、出てきた.binファイルを○○_recovery.bin等の分かりやすい名前にリネームします。この名称はあとでinstall.shに記載することになります。
Brunch関連のファイル群: リカバリイメージから通常のイメージを作成するために必要なのがBrunchです。sebanc/brunchのReleasesページからtar.gz形式のファイルをダウンロードします。
これを解凍すると下の4つのファイルが出てきます。
・chromeos-install.sh
・efi_legacy.img
・efi_secure.img
・rootc.img
これらのファイルはUSB②にChromeOSフォルダを作って格納するものです。
install.sh: ChromeOSの簡単なインストールスクリプトで、Linuxのターミナルから使います。hrikant2002/ChromeOSのGitHubリポジトリからダウンロードできます。
⇒shrikant2002/ChromeOS(Github)
これもUSB②のChromeOSフォルダに入れるファイルです。
桜咲ヒロ氏の記事では、これらのファイルをまとめた「ChromeOSインストールセット」が提供されています。西村誠一氏の記事では、これらのファイルをダウンロードし、所定のフォルダに整理する手順が示されています。
Linux Mintのメディア作成
Windows PCでRufusをダウンロード。USBメモリー①を挿してRufusを起動します。
焼き付けるデバイスにインストーラ用のUSBメモリ①を選択し、ソースにはダウンロードしたLinux MintのISOファイルを選択します。
私の場合、パーティション構成は「MBR」、ターゲットシステムは「BIOSまたはUEFI」、ファイルシステムは「FAT32」で行いました。Rufusの使い方に従い、「スタート」をクリックして書き込みを開始します。
FAT32でフォーマットされている場合、4GBを超えるrecoveryファイルが書き込めない可能性があります。ext4, ntfsなど4GB以上のファイルも書き込めるフォーマットを選ぶ必要があります。今回の「linuxmint-22.1-cinnamon-64bit.iso」は2.77GBでした。
ChromeOSインストールデータの準備
作成したLinux MintのライブUSBメモリーはとりあえず置いといて、次にUSBメモリー②をNTFSフォーマットしたのち「ChromeOS」フォルダを作成します。
先ほどダウンロード・解凍したChromeOSリカバリイメージ (.binファイル)、Brunchの4つのファイル、およびinstall.shファイル をこの「ChromeOS」フォルダにコピーします。ChromeOSフォルダには合計6ファイルがある状態になります。桜咲ヒロ氏の記事では、事前に解凍した「ChromeOSインストールセット」内の「ChromeOS」フォルダを外付けSSDなどにコピーしておく手順が示されています。
install.shの編集
ChromeOSフォルダ内のinstall.shファイルをテキストエディタで開きます(例: メモ帳)。
ファイルの一番下にある`sudo bash chromeos-install.sh -src 〇〇_recovery.bin -dst /dev/〇〇`のような行を編集します。
`-src`の後ろには、コピーしたリカバリイメージのファイル名(例: zork_recovery.bin, rammus_recovery.bin, image.bin)を指定します。
`-dst`の後ろには、ChromeOSをインストールするストレージのデバイス名を指定します(例: /dev/sda, /dev/sdc)。このデバイス名は環境によって異なるため、後ほどLinux上で確認する必要があります。確認するまでは仮の値(例: /dev/sdc)を入力しておきます。
変更を保存します。
BIOS/UEFI設定
インストール対象PCにUSBメモリー①(ライブUSB)を挿し、電源を入れ、BIOS/UEFI設定画面に入ります。入り方はPCメーカーによって異なりますが、たいていはF2キーを押していればBIOS画面が出ます。
起動(BOOT)に関するタブで以下の項目を設定します。
・「Fast Boot」オプションを無効にする。
・「CSM (Compatibility Support Module)」オプションがある場合は「Disabled」にする。
・「Secure Boot Control」を「Disabled」にする。
USBドライブを最初のブートデバイスに設定します。
設定を保存して再起動します。
Linux Mint/Ubuntuの起動とインストール
ライブUSBからLinux Mintが起動したら、メニューの一番上の「Linux Mint」を選択して実行します。
ライブUSBからLinux Mintが起動したら、右下のWi-Fiアイコンをクリックしてインターネット接続設定を行います。
USBメモリー②を挿し、正常に認識してフォルダーが表示されるのを確認します。
実はCF-SZ5で行ったときには、USBメモリー②を挿しても認識されず、しかたなくライブUSB起動時からUSBメモリー②も挿しておくようにしました。最初から挿さっていれば認識するので、機種によってはこの方式をとった方がいいようです。
Linux Mintのメニューからターミナル(Terminal)を起動します。
`lsblk`コマンドを入力し、接続されているドライブ一覧を表示して、ChromeOSをインストールしたい本体ストレージのデバイス名を確認します。
ここは`/dev/sda`、`/dev/sdb`、`/dev/sdc`のように表示されます。内蔵ストレージが`/dev/sda`、インストーラUSBが`/dev/sdb`になることが多いようです。
確認したデバイス名が、事前に一度編集したinstall.shに記載されていた`-dst`の値と異なっている場合は、Linux上でinstall.shファイルを再度編集し、正しいデバイス名に修正します。
ファイルマネージャーを開き、ライブUSB(`/cdrom`)内の「ChromeOS」フォルダに移動します。または、ターミナルで`cd /cdrom/ChromeOS`と入力して移動します。外付けSSDなどにChromeOSフォルダをコピーした場合は、その場所へ移動します。
ターミナルでChromeOSフォルダに移動する方法がわからないときは、install.shファイルをターミナルにドラッグ&ドロップして、コピーされた文字列を適当に修正してcd(チェンジディレクトリ)するのがおすすめです。
ターミナルでcdできたら、インストールスクリプトを実行します。具体的には`sudo sh install.sh`と入力してEnterを押します。
「PCのデータをすべて消去する」という警告が表示されるので、了承する場合は「yes」と入力します。
`cgpt`が見つからないというエラーが出た場合は、次の3つのコマンドを順に走らせてから、再度 `sudo sh install.sh´を実行します。
sudo apt update
sudo apt install cgpt -y
sudo apt install pv -y
他のPCで試した時にも結局上記コマンドが必要だったので、最初から3つのコマンドを先にやった方がいいかもしれません。
`sudo sh install.sh´が通ったあとはインストールが自動で行われます。インストールには時間がかかります。固まってしまうような場合(不具合)もあるかもしれませんが、それ以外は待つしかありません。
「Brunch has been successfully installed on the device /dev/〇〇」のようなメッセージが表示されればインストール完了です。Linuxを終了してUSBメモリーを全部抜き、PCを再起動します。
ChromeOSの初回起動と設定
インストーラUSBを抜き、ChromeOSをインストールしたストレージを接続した状態でPCの電源を入れます。Brunchが立ち上がり、セットアップ操作が進んでいくはずです。
初回起動時は少し時間がかかることがあります。無事ChromeOSが立ち上がることを祈って待ちます。
ChromeOSが起動したら、画面の指示に従って言語やキーボード設定、ネットワーク設定、Googleアカウントでのログインなどの初期設定を行います。これはChromebookの初回設定と同様です。
注意点・トラブルシューティング
このインストール方法は環境依存性が高く、エラーが発生する可能性があります。ご自身でエラーを解決できる方向けの方法です。
非正規の方法でインストールされたChromeOSであるため、一部の機能(例: スマホ連携)が使えない可能性が考えられます。これは正規のChromebookではないこと、root化されていること、セキュリティソフトの影響などが原因として挙げられています。
インストール先のストレージを後でWindowsなどでフォーマットしたい場合、Windowsの「ディスクの管理」ではパーティションを削除できないことがあります。その場合は、コマンドラインツールの`diskpart`を使用して手動でパーティションを削除する必要があります。操作を間違えるとWindowsのデータも消してしまう可能性があるため、慎重な作業が必要です。
古い世代のCPU(第1世代など)の場合、使用するリカバリイメージ(samusなど)が現在では提供されていない可能性や、USB3.0ポートがないPCでは動作速度が現実的ではない可能性が指摘されています。
おわりに
この方法で、お使いのPCでAndroidアプリも使える本来のChromeOSを体験できる可能性があります。作業は自己責任で行ってください。
私のCF-SZ5は無事にChromebook化され、テレビにつながれてビデオオンデマンド専用機となっています。
ちなみに手元にはさらに古い機種で「ASUS TP200SA」という名機(迷機?)があるのですが、これはChromebook化がうまくいきませんでした。そのうちまたチャレンジしてみようと思っていますが、現在はLinux Mint止まりの状態です。
CF-SZ5は2016年に発売された製品なので10年選手ということになります。Windows11を積むにはスペック的に非力すぎるマシンたちは淘汰されてしまいがちですが、Chromebook化するとかChrome OS Flexを入れるとかの手立てを講じてなんとか現役続行させてあげたいものです。